昨日のおはなし。
銀座の書店へ出かけたときのこと。
同行者と「本を1冊買って喫茶店で読んでいこう」という話になり、
されどもなかなかピンとくる小説がなく店内をさまよっていました。
時計を見ると時刻は午後3時。
しまった、かれこれ1時間近く店内をぐるぐるしている。
焦ったすえ、
あきらめて1冊の本を手に取りました。
一度は手に取ったものの棚に戻したあの1冊。
表紙が特別気に入ったわけでもなく。
裏表紙のあらすじが気に入ったわけでもなく。
時間がなかったので仕方なく買うことにしたのだけれど。
それが、
蘇部健一先生の『赤い糸』との“運命の出会い”でした。
おもしろかった。
とってもとってもおもしろかった。
こんなにドキドキワクワクしながら本を読んだのは久しぶり。
たとえば、
主人公が緊張しながら扉を開けるシーンが数箇所出てきます。
そのときちゃんと扉の挿絵が次ページに用意されているんですね。
つまりページをめくることで読者も同時に扉を開けるという演出ッ!
これがまたドキドキなんですよ。
喫茶店にいることも忘れてページをめくるときに深呼吸する奴(笑)。
演出もさることながら、
各話登場する人物がことごとくどこかしらしょうもなくて、
各話期待させるだけさせておいて読者をしっかり落とし、
ロマンチックなタイトルとは裏腹にちょっと笑わせにくる。
どこまでも予想のナナメ上をいく蘇部先生。
嫌いじゃないですむしろ大好きですごちそうさまです。
「赤い糸をたどって」を読んだとき。
正直「え、そういうオチ…(困惑)」とか思いました。
ラストの大惨事に思わず顔が( ´・ω・`)ってなりました。
「運命の人、綾瀬幸太郎」を読んだとき。
占いにのめりこんでるスイーツ(笑)ざまぁwwとか思いました。
「出逢わなかったふたり」を読んだとき。
恋愛小説を読んでいる最中にも関わらず、
現実を見ようと急に体温がスッと低くなっていくのを感じました。
「落ちこぼれの天使」を読んだとき。
小説だって上手くいかないんだもの現実見よう。
そう思いなおした途端にリア充が出てきて憤怒しました。
我ながら心が汚れていたなと今では思います。
「ふたりは生まれたときから、運命の赤い糸で結ばれていた」
最後のこのおはなしを読んで思ったんです。
これまでのすべてのおはなしに対して「ごめん( ´・ω・`)」と(笑)。
まさかここまですべてが壮大なハッピーエンドの伏線だったなんて。
天使が神様から与えられた能力は、
運命の赤い糸が目に見えるだけで、
そのほかにこれといった能力は与えられていない。
それは神様だってきっと同じことでしょう。
たしかに運命の赤い糸で結ばれた男女はいるかもしれない、
けれどもそれはあくまで結ばれている“だけ”の状態であって、
結ばれた糸に気づくのもそれをたぐるのも当人たちの仕事で、
神様も天使もおそらくはそこまで面倒は見てくれないでしょう。
あのときもしも、
同行者に代わりに適当に本を見繕ってもらっていたら。
漫画を1冊持っていたためにそのままレジへ行っていたら。
むしろ本屋を出てショッピングで手を打つことにしていたら。
それでも結局はこの本を手に取ったのですから、
これはこれで1本の赤い糸だったのかもしれませんね。
と、まぁ、そんなふうに、人生とはつねに、もしもの連続である。
「もしも」自分からその一歩を踏みださなかったら。
そこにあるのは、それはもう、この先ずっとただの糸。