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レイチェル・ウェルズ『通い猫アルフィーとジョージ』(西村和美/訳)を読了。前作前々作と感想記事をハーパーコリンズ・ジャパンの営業部の方にtwitterで取りあげていただき、拙筆が知らないうちにNAVERまとめにも使われていたこともあるシリーズ。今作もグッとくる名言だらけでキャットなのにドッグイヤーがとまらなかったので犬派の人にもどちらでもない人にもおすすめです。猫好きだけが読むなんてもったいない!

 

 

 

幸せの数だけ悲しみもある

通い猫としての暮らしを謳歌し、幸せな毎日を送るアルフィー。だが人生には別れが付き物で、ある日アルフィーにも突然の別れが訪れることに──以来すっかり落ちこむアルフィーを元気づけようと、飼い主の一人がなんと仔猫をもらってきた!思いがけない仔猫の登場に、どうしていいかわからないアルフィーだが……。またも問題続出の町を、今度は2匹で救えるか!? ハートフル猫物語第3弾。

 

※あらすじはハーパーコリンズHPより引用しました。
http://www.harpercollins.co.jp/hc/books/detail.php?product_id=10925

冒頭からスノーボール(彼女)と仲睦まじく旅行しているのでチクショー見せつけてくれる!…と思っていたらあっというまに衝撃の展開。これまでは人の数だけ悲しみもある、という話だったけれど、今作は幸せの数だけ悲しみもある、という話だったな。あたりまえのことなんですけどね。“幸せそう”に見えるのも他者の主観だし、人は幸せをつかむとさらにそのむこうにも幸せが見えて欲しくなる生きものだから。

 

 

 

そして忘れてはいけないのが新猫・ジョージ!この子がまたかわいい。あざとくてかわいい。サマーに「ドージ」と呼ばれてしまうところもかわいい。

 

「新しいママになってくれるの?」見つめてくる瞳に期待がこもっている。
「いいや、ぼくは男だ。ママは女だろ」
「じゃあ、パパなの?」ジョージがたたみかけた。

(P96/L9~11より引用)

 

かわいい(確信)

 

正直、ジョージが最初にやってきたときはそれこそどこかの“良識の代弁者”さんみたく「のけ者にされた気分にならないようにしてやらないと」とアルフィーを心配したものだけど予想以上にアルフィーが大人で安心しました。こういうところは素敵。たまに自惚れキャラが腹立つ(かわいい)けど。

 

 

 

さらにさらに。声を大にして言いたいのが今作もタイガーがイイ女すぎてしんどい。これです。

 

「わたしとあなたは友だちで、友だちはなにがあっても一緒にいるの。たとえ一緒にいて楽しくないときも。だから、もがき苦しむとかふてくされるとか泣くとかしたければ、そこにいてあげる。怒ってもいいわ。なんでもやりたいことをやりなさいよ、アルフィー。わたしがそばにいてあげるから」

(P67/L17~P68/L4より抜粋)

 

最高。

 

そろそろ次のトピックにいきたいので一言で済ませるけど、一生タイガー姐さんについていきます。

 

 

 

愛をもっとシンプルに

ペットを飼うのは人間の自己満足だと言う人もいるけど、そうだろうか。寂しさや興味本位だけで飼う人がいることも残念ながら事実ではあるけれど、人間と動物が一緒に暮らすことは、ときにおたがいが同族同士では得られなかったものを得ることだってあるはずだ。たとえば愛情だってそのひとつ。

 

人間と動物、あるいは動物同士でさえ、愛情表現はそれぞれ異なる。愛情に決まったかたちはないのだと彼らは教えてくれる。それはいきなりジョージという“息子”ができたアルフィーにも、クレアとジョナサンのあいだにまたがる養子問題にも通じるものだし、幸せへのチャンスに足踏みしてしまうターシャにも、家族や夫婦の〈型〉に囚われるポリーとマット、フランチェスカとトーマスにも同じことがいえる。

 

愛情にルールはない、お互いに相手の面倒を見るだけだ。

(P383/L9より引用)

 

「愛」だなんてたいそうな名前をつけて、意味や定義を決めて、ややこしくしているのは人間だけだ。アルフィーのジョージへの親バカっぷりを見ていると、愛おしいのと同時に世界をもっとシンプルに見つめてみようという勇気がわいてくる。

 

 

 

愛しあうのは人間だけじゃない!

シリーズにはよくあることだけど、まぁ今回の騒動は特に1作目に比べるとトントン拍子に事が運んですんなり解決、という印象。あくまで表面上だけを見ればね。アルフィーやエドガー・ロードの人々の気持ちを考えるともちろん胸が張り裂けそうなほどの大事件であったことに変わりはないけれど、心持ちとしては前作〈はつ恋〉と似たヒヤヒヤしたものでした。〈奇跡〉はヒヤヒヤというよりスッと肝が冷えるような心地だった気がする。

 

なので、さすがに今回は泣かないだろ…と調子に乗っていたらChapter33からまんまと泣かされてやんの。平常運転でした。ジョナサンが私の涙腺ブレイカーであることがよくわかった。好き。

 

人と人をつなぐささやかな絆からはじまり、恋、そして家族とひろがっていくアルフィーとエドガー・ロードの人々(+猫)のハートフルな愛情の物語。愛しあうのは人間だけじゃない!猫のキミにしかふりまけないとってもキュートでちょっぴり危なっかしいその愛は、次は一体、どんな幸せを連れてきてくれるの?

 

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。