クセがない鶏肉は退屈かい? -『鶏小説集』感想
2017年12月14日
坂木司『鶏小説集』を読了。当ブログにおける最古の記事『肉小説集』の続編(第2弾)です。なつかしさのあまり軽率な気持ちで記事を読みかえしてみたら文章力が幼児レベルでのみぞおちのあたりに強力な黒歴史パンチを喰らってしまいました。早急に『肉小説集』を再読して感想記事を書こう。なにこのぐちゃぐちゃ体裁。もんじゃ焼きか。2015年に私に読まれた小説たちかわいそうすぎる。月1ぐらいの間隔で再読して記事を書きなおす救済企画をやるべき。
鶏肉は正義だ
トリドリな物語。旨さあふれる「鶏」小説を召し上がれ
「トリとチキン」…似てるけど似てない俺たち。思春期のゆらぎと成長を描く/あげチキ
※あらすじはKADOKAWAより引用しました。 |
前作を読んだのが2年前なのであまり記憶がないけれど、本作は全編の空気に統一感があり、また主人公同士ほのかなつながりを感じるので、もちろん期待して読んではいたけど想像以上におもしろかった!前作は主に「武闘派の爪先」のせいでそういうのまったく感じなかったからなぁ。あとがきの鶏肉に対する作者の考察にもグッときました。鶏肉ヲタ大勝利。やはり鶏肉は正義だった。ちょっくら脳内ファミマでファミチキ買って祝杯をあげてきます。あ、セブンのからあげ棒も捨てがたい…ええいままよ!(どっちも買う)
以下、各短編の感想をまとめました。
クセがない鶏肉は退屈かい?
トリとチキン
外見は似ているが趣味はてんで正反対のハルとレン。美味しいごはん、美人な母親、馬のあう父親。理想的な家庭を目の当たりにし、庶民的な自分の家や家族に辟易するハルだが、一方のレンはそんなハルの家をいたく気に入っている様子。あるとき「入れ替わってみたい」とレンに持ちかけられ不安を抱きつつも承諾したハルだったがこのひとときをきっかけに2人の心は揺らぎはじめ――。 |
見た目そっくりな他人同士が思いつきで入れ替えって、
焼き鳥も揚げチキも中身は鶏。
あなたはなにになる?
地鶏のひよこ
「息子のことがあんまり好きになれないんですよ」夜中のコンビニで息子が通っていた英会話教室の保護者・浅野と出会い、正直な気持ちを吐露してしまった橋本。責めろよ、と思っていたのに、浅野から返ってきたのは「同じです」という意外な言葉。好きなスポーツも、好きなゲームも、好きな食べものもまったく違う“合わない”息子。なんのために育てたか。浅野の問いかけに橋本は――。 |
橋本さああああん(泣)
最後の行でぐわっと身体が熱くなった。あれこの感じどこかで…
男家族ってわからない。
どちらが両親にとって理想どおりなのかは子供側の私たちにはわからない。
まさか「トリとチキン」に繋がると思いませんでした。
丸ごとコンビニエント
これといったこだわりもなく、なんでもそこそこにこなす、〈浅くて広くて便利な田中〉。使い勝手のいい彼はバイト先のコンビニでも当然クリスマスから正月までシフトがぎっしりでおっさん(長内さん)とテンチョーに囲まれながらチキンとケーキを売っていた。生々しくも惹きつけられるローストチキンに食欲を掻きたてられながら、一方、町内ではサンタクロース姿で鉈を持った不審者の姿が目撃されているようで――。 |
前作のハムのおはなしに微妙にリンクしているのかな。
でも、生々しさを知らないのは本当だ。
(P149/L17より引用)
きれいな世界で育ったタカナ君がグロくて生々しいローストチキンに魅せられたように、
読後は思わずHellow Sreepwalkersの「
羽のある肉
面倒な新聞委員に“うっかり”立候補してしまった井上竜太は、あれよあれよというまに女子と2人で、しかも一番面倒クサそうな花火大会の記事を作成することに。ついていないと思っていたけれど、村岡美咲は見た目が子供っぽいものの、なんだか妙に馬があう。そして取材前の打ちあわせの日、夕立に襲われて逃げてきたアパートの軒下で竜太は“うっかり”――。 |
中村航氏の小説みたいなゆったりとした恋のおはなしで瑞々しかっ
理想とか好きなタイプとか言いますけどね、結局、
食べたら食べたで少量でも肉はあるし、食べなくてもダシになる。
とべ エンド
「子供殺そうよ、子供」編集者からそそのかされて描きあげたエピソードに批難の声が殺到し、編集部に呼びだされた『皆殺しレクイエム』の作者・戸部。次の連載分からは元の路線に戻すように、と編集長に頼まれ帰路についたが、次は誰を殺そうか、と思案しているうちに意識は高校を出て最初の夏、〈鶏ハム〉を食べに押しかけてきたバキ君と過ごしたあの日へ飛んでゆく――。 |
もとから受け入れられていない世界だ。後のことなんて考えるな。
(P248/L7より引用)
読んだとき心の中にドッと風が吹いた。いや、
バキ君のように世間から疎まれるようなキャラクターは、
砂糖、塩、
誰にとっても美味しいなんて、どだい無理な話だ。
人生は色鶏々(とりどり)
鶏。羽を持ちながら空を飛ばない鳥。それはチキン=臆病者なのか、はたまた、