真保裕一『レオナルドの扉』を読みました。歴史冒険小説…おお、今までさっぱり読んでこなかったまったくの新境地。我ながらよく読もうと思ったよなこれ。歴史とか苦手を通りこしてむしろ興味関心まったくなかった分野なのに。「好き」の反対は「嫌い」じゃなくて「無関心」なんだと前に兄が言っていたけれど、それを読もうとする気概。ショタの力ってすごい。あ、表紙のショタに惹かれて手にとったのバレちゃった。
ウソだと言ってくれよ、ペル
イタリアの小村に住む若き時計職人ジャンは、祖父ベルナルドの技術を受け継ぎ、村の機械の故障を一手に引き受ける働き者。暇な時間は村長の息子ニッコロとともに、秘密基地で「自走車」の模型を作ったりして遊んでいた。ある日、村にフランス軍が侵攻し、ジャンの父のことを聞きたいと脅される。祖父によると、ジャンが幼い頃に失踪した父は、レオナルド・ダ・ヴィンチが遺した秘密のノートの行方を知るという。仏皇帝ナポレオンは戦争に利用しようとノートを狙っているのだ。謎の修道女に助けられたが彼女にも企みがあり……。追われることとなったジャンは、相棒である犬のペルと共に、ノートの手掛かりを追って村を発つことにした。ジャンは知恵と勇気を胸に、隠された数々の仕掛けに挑み、強大な敵に立ち向かう! 出典:https://www.kadokawa.co.jp/product/321705000346/ |
主人公となるのは、フランス革命直後のイタリアの小さな村に、時計職人の祖父とふたりで暮らす十六歳のジャン。
――解説より
解説を確認したらジャン16歳だった。セーフ(?)。
角川つばさ文庫からも刊行されているそうなので、児童文学、なのかな。小難しい歴史背景や設定があるわけではなく、物語の構成はよくも悪くも単純明解、身構える必要はありません。後半はとくにご都合主義っぽくフィクションすぎるきらいがありますが、展開にメリハリがあって目が離せず、なんだかんだ読みきってしまいました。おもしろくないわけではないけれど、うーんどうしてだろう、あまり物語そのものは記憶に残りません。
そうそう、犬好きのためにひとつ忠告しておきたいのは、表紙に描かれ、あらすじでもあたかもジャンの相棒かのように書かれていますが、名犬・ペルは中盤あたりからベルナルドとともに空気になります。ウソだと言ってくれよペル。もちろんニッコロも好きだけど、ワンちゃんが相棒なのか!とワクワクしながら読んでいたからそこらへんはちょっとがっかりだよペル。まぁ、本当にかわいそうなのは全編にわたって空気だしジャンたちには雑に扱われるマドレーナだけど。
大切なものを守るために
先月くらいにSEGAの『戦場のヴァルキュリア4』というゲームをプレイしました。この戦いから大切な人を守るために戦わなければならない…そんな戦争の悲しい連鎖に胸を痛める作品です。
本書を読んだとき--殊にジャンの宿敵となるバレルの動向を追うときにも、この胸の痛みを感じました。
今は、与えられた仕事を果たすしか、生きる道はないのだった。
(P229/L5より引用)
偉大なる天才の発明を、人を殺し、争うために用いてはならないという、ジャンの意思はもちろんわかる。わかるよ。だけど、誰もが大切なものを守ることで精一杯で、それだけは、戦場において誰だって同じなんじゃないだろうか。ナポレオンの命令とあらばどんな任務であろうと愚直に遂行するバレルだって、あるいは目的のためならばどんな手段をも厭わないビアンカだって、私は、頭ごなしに悪だと言えない。
ダ・ヴィンチの力を借り果敢に危険をかいくぐっていくジャンの勇姿も光りますが、ベルナルド、バレル、ビアンカといった大人組の苦悩にもついつい共感してしまいます。本書では徹底的に悪役として描かれるナポレオンでさえ、史実の裏にはきっと秘められた想いや葛藤があったことでしょう。誰もかれも魅力的なキャラクターゆえに、なぜ対立しなければならないのか、わかりあう道はなかったのだろうか、と、歯がゆさを感じずにはいられません。
葛藤といえば、P206~207のニッコロも、多くは語られないけれどたくさん悩んだ末の決意だったんだろうなぁ。うれしかったけれど複雑な気持ちだった。改めて作品をふりかえってみると一番印象に残っている名シーンです。男の友情は尊い。
世界史Bの勉強をはじめました
というわけで、初の歴史冒険小説でしたがなかなかよかったです。世界史に興味がわいてきたので、今、スマホにアプリをダウンロードしてなんと本当に勉強しています。世界史B。基本のキからなのでダ・ヴィンチやナポレオンの時代にはまだまだたどりつけそうにないけど、根気よくやっていきたい。いいきっかけをもらいました。真保氏といえば前々から『デパートへ行こう!』が気になっていたのでこちらもいずれ読んでみようかな。