【感想在中】紙切れ・話題・ライト係から、不思議な手紙が届きました。
2019年5月28日
┃5月某日 麦宅
白々しい茶番からはじまりましたが、先週、東京にある三省堂書店神保町本店内に本を買いに行ったら神保町いちのいちで「何者からかの手紙」という心ときめく“手紙小説”なるものを見つけてしまったので買ってみました。たくさんある中から私が選んだのは読書好きのフリーライターとして馴染みのある「紙切れ」と「話題」、さらに友人推薦枠として「ライト係」からの手紙。はたしてその内容とは……。
ちなみに今回、各手紙のあらすじや引用は紹介しません。短いおはなしだし、わざわざ中身の見えない「手紙」という形式を選んだ小説のあらすじを話してしまうのも野暮ってものでしょう?私の個人的な感想だけお伝えしますので興味があったらぜひ実物を。
紙切れからの手紙
さっそく開封してみます。手紙を開けるときは私カッターナイフをペーパーナイフ代わりにして山折りのところを切って開ける派なのですが、なんだかこのレトロな封筒はペリペリッと剥がして開けたくなりますね。慎重に、……っと。
心の中で謎の声が出ちゃった。良すぎて。
「紙切れ」からの「手紙」であることを巧く利用した言葉のこだわりには感心してしまいます。主人公の純朴な感性もとってもかわいらしい。あれこれ空想するのが楽しい追伸の内容もGood!たとえば、きむらゆういち『あらしのよるに』は読者に未来を想像させますが、対してこちらは過去を想像させてくれる。
手紙がしたためられた紙はおそらくわら半紙なのですが、わら半紙というものに触れるのも学生時代ぶりと随分久しく、またそれが用いられた経緯を想うと、ああ、大切にしよう、と抱きしめたくなる手紙でした。
話題からの手紙
まぁ、もともと極度の人見知りなので、本が好きな人の前でもゲームが好きな人の前でも結局のところまったくしゃべれないんですけどね。それはさておき開封します。
買ったときから「話題」という形のないものを一体どうやって主体にする気なんだと思っていたのですが、いやぁ、「話題」がなんといきいきと人格を持ち、話すことか!おかげで私が致命的に口下手なのは自分のせいじゃないんだなと謎のポジティブ思考が生まれました。
私の母も「ああ、その話ならよく存じております」な話を本人は自覚なしにする人なのですが、母に所属する〈話題〉さんたちの中で同じことが起きているならしょうがないかなと思いました。今後はもっと寛容な気持ちで母の話を聞けそうです。
そして、これを機に私所属の〈話題〉たちにももうちょっとがんばってほしい。
ライト係からの手紙
郵便局が届け先を間違えたのかと思いましたが友人推薦枠でした。手紙を選んでいるとき横にいた友人がやたら推していたから買ったんだけど、いや、「ライト係」ってなに?……ちょっと考えてみたけどやっぱり全然わからなかったので開封して確認してみます。
まごうことなき「ライト係」からの手紙でした。
3枚目から4枚目へのつながりがとても計算されているなと。まだ外が明るいうちにこれを読んだのだけれど、最後の文章を読んだとき、オレンジのあたたかい光が視界いっぱいにポッとひろがった気がして。
喫茶店で気心の知れた相手と紅茶を飲みながらぼんやりしたり、あるいはひとりで本を読んだりする時間がとっても好きなのですが、風景の一部だったライトの話が聞けて、これからはよりいっそう喫茶店を空間まるごと楽しめそう。
今からちょっと喫茶店行ってくる!
というわけで、東京は三省堂書店神保町本店内にある神保町いちのいちで偶然見つけた“手紙小説”が素敵すぎたので紹介しました。どうやら前から話題にはなっていたようです。「何者かからの手紙」についてはBOOKSOUNDSという名前以外にはほとんど情報がないそうですが、50種類以上(!)の手紙は他所でも販売されているようなので、街中で見つけたら、ぜひこの不思議な手紙を受けとってみてはいかがでしょうか。それでは。
かしこ。
参考にしたサイト一覧
神保町いちのいち
https://ichinoichi.books-sanseido.jp/
BOOKSOUNDS
http://book-sounds.blogspot.com/
“火星人”や“どろぼう”から届く物語 自分で封を切る新感覚手紙小説「何者からかの手紙」が読書通をうならせる – ねとらぼ