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乙一氏『The Book』読了しました。
荒木飛呂彦氏原作の漫画「ジョジョの奇妙な冒険」
第4部の世界を舞台にした小説だそうですね。

 

原作未読なのですが、
アニメを何話か観たことがあったので
結構軽い気持ちで手にとってみました。
余談ですが4部は実写映画化もされるそうですね…お、おう。

 

ちなみに作者の乙一氏は
中学時代にそこそこの作品数を読んだのですが、
高校時代だかに読んだ『箱庭図書館』を最後に
しばらく読んでいなかったのでなつかしかった。

 

 


 

 

この町には人殺しが住んでいる――。

 

町の花はフクジュソウ。
特産品は牛タンの味噌漬け。
一九九四年の国税調査によると人口は五八七一三人。

 

その町の名前は杜王町。

 

広瀬康一と漫画家・岸辺露伴は、
ある日血まみれの猫と遭遇した。

 

後をつけるうち、
二人は死体を発見する。
それが“本”をめぐる奇妙な事件のはじまりだった……。

 

乙一が渾身の力で描いた『ジョジョの奇妙な冒険』、文庫で登場!!

 

※あらすじは文庫裏から引用しました。

 

 

 

前述したとおり、
ジョジョ4部に関してはアニメを数話観ただけです。
素人が書いた感想であることだけ先に述べておきますね。

 

まず率直な感想を言うと、
読むのにかなりの時間がかかりました。

 

かなり硬派な文章です。
作者相当気合入れたと思います。
乙一氏ってこんな文章硬派だったっけ…?

 

読みはじめれば次の区切りぐらいまでは
集中が削がれることはなかったのですが、
個人的には結構ボリュームがあってなかなか終わらないなと。
まぁ、ジョジョの世界観に慣れている人なら気にならないか。

 

 


 

 

おはなしのほうは、
まったくのオリジナルキャラ(たぶん)が中枢を担うので
私のようにまだあまり詳しくない人でも読める内容です。

 

おなじみの3人をはじめ、
露伴先生、由花子さん、イタリアンのシェフぐらいまで
把握できてスタンドがなにかわかれば問題ないでしょう。
戦闘シーンは描写が細かいのでそこだけ各自事前に確認で!

 

主人公の琢馬君ですが、
彼をめぐる曇天のように暗く重たいおはなしがまたいい。

 

友人にうらぎられたことも、
逆にうらぎったこともおぼえていた。

 

自分がだれかをねたんだことも、
失敗すればいいのにとねがったこともおぼえていた。

 

視線や言葉が、
いつまでも消えずに頭蓋骨のうちがわをめぐり、
どのようにつらい経験も、
過去にながれていかなかった。

 

私はきっと琢馬君ほどではないのですが、
記憶力はわりといいほうなので彼の苦痛はとてもわかります。
自分の意思に関係なく“記録されている”って苦しいですよ。

 

あとは本にまつわるおはなしというだけあって、
文字や物語がもつ力や可能性について語られる場面も多くて、
作者である乙一氏の主観も垣間見えてなかなか興味深いです。

 

もちろんジョジョの小ネタも!

 

これまでに食べたパンの数を
おぼえている人間がこの世にいるだろうか。
しかし琢馬は正確に記憶していた。

 

詳しくは知らないのですが、
パンのくだりは1部が元ネタだそうですね。
しかしパンの数を記憶している琢馬君であった…(笑)。

 

 


 

 

漫画のノベライズであることを抜きにしても、
多視点によるサスペンス・ミステリーとしておもしろかったです。

 

数話観たきり観れてなかったので、
私もこれを機にまた続きから観てみようかな。
私は由花子さんとかエネルギッシュで好きです。

 

挿話のように合間で語られる明里さんのおはなしも、
壮絶な状況の中でギリギリ生きる緊迫感がいいです。

 

戦闘シーンを読んでいて、
実写映画は相当コケるんじゃないだろうかと
素人ながら改めてすんごい心配になりました。
こっちの小説版は骨のある読みごたえでしたけどね。
実写映画化の前にまずは小説で肩慣らしでもどうですか?

 

ファンの方々の感想:
http://jojosoku.com/archives/39638335.html
※ごく一部ですが物語の核心に触れる書き込みがあります。

 

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。