有川浩さんの『旅猫リポート』を読了。
母から「おもしろかった」と勧められた本です。
有川浩さんの作品は、
過去に『3匹のおっさん』『ヒア・カムズ・ザ・サン』を
読んでピンとこなかったんですけどこれは案外読めました。
母娘共通の感想ですが、
エピローグは蛇足だったかなぁと残念な気持ち。
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子供の頃から
日本各地に引越しを繰り返してきたサトルは
相棒猫ナナを連れて、懐かしい人々を訪ねる旅に出る。
家業を継いだものの妻が家出中の幼馴染、
今や立派な農業家となった中学時代の親友、
高校・大学の同級生同士で結婚してペンションを営む友人カップル……。
行く先々で思い出を語る時間は、
サトルとナナを迎える人々の胸の内にも
ささやかだが大切な変化を芽吹かせてゆく。
そして旅の果てに1人と1匹が見る風景とは。
※あらすじは文藝春秋特設サイト内「物語について」より引用しました。
http://www.bunshun.co.jp/pick-up/tabineko/story/index.html
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物語の核となるサトルに一人称がないのは新鮮ですね。
朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』を思いだしますが、
サトルは絵に描いたような“いい人”でリアリティがないのが惜しい。
サトルはなぜ愛猫ナナを連れて旅をしているのか。
サトルの“よんどころない事情”は
物語を読み進めるうちに明らかになっていくという仕様ですが
序盤でおおよその見当がついて終着点も容易に想像がつきます。
――が、
ここはさほど重要ではなくて、
むしろ彼の目的と本心を悟ったうえでナナが
彼とこの旅にどのようにむきあっているのか。
ここがこの物語のミソのように思いましたね。グッときます。
ノリコに呼ばれてその膝にナナが駆けこんでくる、
あのシーンから数ページだけでもう十二分に読む価値がありました。
倫理の本を読んでいて動物の権利に興味をもち
今ノートをとりながら専門書と格闘しているのですが、
本作のナナの気丈でさりげないサトルへの深い愛情は、
生きものを〈飼う〉ということがどういうことなのか。
そのあたたかさ、重み、多様性を見つめなおすいいきっかけになりました。