【企画】『暗黒女子』映画化を見届けてきた
2017年5月12日
※注意※
当記事には
映画「暗黒女子」および原作『暗黒女子』に関するネタバレがあります。
映画「暗黒女子」をすでに鑑賞されている方、
原作を既読の方、またはネタバレを了承する
未鑑賞/未読の方のみ閲覧されることを推奨いたします。
本文中【反転】や赤字でのネタバレの注意喚起を行いませんのでご注意ください。
映画「暗黒女子」および原作『暗黒女子』詳細はこちら:
映画『暗黒女子』オフィシャルサイト
http://ankoku-movie.jp/
暗黒女子│株式会社双葉社
http://www.futabasha.co.jp/introduction/2016/ankokujoshi/
Mugitterでは原作『暗黒女子』の感想記事を掲載しております。
先月末、映画「暗黒女子」を観てきました。
4月1日の封切りだったので
5月現在も上映しているかは微妙なところなのですが、一応。
ディスク化/配信された際の参考に鑑賞レポを残しておきます。
結論から言ってしまうとおおむね悪くない作品でした。
志夜を使うのは諸刃の剣
原作との大きな違いは
原作には登場する古賀園子が削除されている点でしょう。
これにより、
定例会での小説による告発の相関図が
原作とは微妙に異なってくるのですが、
映画では園子の小説部分は高岡志夜が請け負っていました。
個人的にはこの改変は改悪というほどではありませんでした。
むしろ園子の理路整然とした語り口で
ディアナのオカルト話が語られるより、
ラノベ作家の志夜がこれを語ることで
突飛な告発を“らしさ”として消化できたので。
ただその一方で、
聡明で早熟な印象だった園子だから成り立ったいつみの父との疑惑を
映画の志夜のキャラクターで描くのは無理があったように感じました。
一応、設定としては筋が通ってはいますけどね。このへん惜しかった。
いつみと小百合は“太陽と月”
さて、
作品最大の見どころとなる〈主人公〉白石いつみですが。
彼女の本性が明かされる一幕を見ていると、
どうにも俗っぽいというか庶民的というか…安っぽい。
清楚なお嬢様学校の支配者たる者、
あそこはもっと知的に!優雅に!狡猾に!脇役どもを笑わないと!
劇中でいつみと小百合は「太陽と月」と言われていましたが、
監督と私(読者)とではそもそもこの解釈が違ったのかもしれません。
原作『暗黒女子』を読んだとき、
私はいつみと小百合を〈正反対〉ではなく〈似て非なるもの〉と解釈していました。
上手く言えませんが、外見的・表面的な部分は、むしろ2人は似ていてもよかった。
内面――内なる本性、ここが「太陽と月」として決定的に違ってほしかったのです。
世界観と制作面の矛盾
ブルガリアのシーンが特に顕著でしたが、
お嬢様学校が舞台なのに皮肉にも低予算感が散見するのが非常に残念。
改変はあるものの原作にはおおよそ忠実な脚本で、
映像になることで露骨に味わえる甘美で毒々しい描写も蠱惑的。
全体で見れば好印象な作品だけになおさらこの“安っぽさ”が目についてしまいます。
個人的には好きですが、
評価するとなるといろいろ惜しい作品でした。
映像美や雰囲気を味わうのに一度観てみてもいいのではないでしょうか。
劇中音楽が大変素晴らしかったのでサントラはとりあえず買います。