チャーリー・N・ホームバーグ『紙の魔術師』(原島文世 訳)を読了。表紙に惹かれて前情報なにもないままとりあえず購入しました。中盤なかなか没入できずちょくちょく流してしまったけれど、読後改めてふりかえってみると、なんだかんだおもしろかった。次の小説に行かずこのまますぐ本作再読でもいいなぁ。
『紙の魔術師』のここが魅力的!
魔術が高度な専門技術とみなされている1900年代初めのロンドン。魔術師養成学院を卒業したシオニーは、金属の魔術師になりたかったのに、人気のない紙の魔術の実習を命じられた。そのうえ師匠の折り師セインは変わり者。だが気の進まない勉強を続けるうちに、彼女は紙の魔術の魅力と師匠の優しさに気づきはじめる。そんなある日、セイン師が禁断の魔術の使い手に襲撃され……! 魔法きらめく歴史ファンタジイ三部作開幕
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『紙の魔術師』のここが魅力的!①
帯に「歴史ファンタジィ」とあって、積極的に読むジャンルじゃないから気後れしたものの、実際に読んでみると時代背景は気になりません。どちらかというと個人の歴史が物語の核。
『紙の魔術師』のここが魅力的!②
ファッションもさることながらシオニーは聡明で勇敢、セイン師とのやりとりを見るに口も巧いし、優秀だけど女の子らしいところもあってもうとにかくめちゃくちゃかわいい。完璧。なるほどこれがパーフェクト主人公というやつか。
『紙の魔術師』のここが魅力的!③
紙の魔術師の通称〈折り師〉という言葉があらわすように、物語には紙飛行機、鳥や魚といった生きもの、意外なものでは“パックンチョ”までさまざまな折り紙が登場するのも魅力の1つなのですが、個人的にもっとも魅力的だったのはこれ。
最終的には、
望めば小説を読んでその場面を目の前に展開することができるよう になる。 (P46/L9~10より引用)
なるほど、紙と“結合”すれば本も当然紙で構成されているからそんなことができるわけか。紙の魔術師めちゃくちゃ最高じゃん。なりたい。主に芸術性において他を圧倒できるので今後開発されるRPGのジョブには「紙の魔術師」を導入するべき。「きようさ」めちゃくちゃ求められそう。
鬼門はエメリー・セイン
物語は中盤あたりからガラリと空気が変わるのだけど、ここまでのあいだに読者がどれだけセイン師に興味を持てたかが非常に重要。もちろんセイン師も十分に魅力的なキャラクターではあるのですが、私はどちらかというとシオニーに夢中だったから、冒頭にも書いたように中盤からはササッと流すように読んでしまいました。だけど大丈夫。
一方、禁断の魔術の使い手〈切除師〉のライラはどうも『
紙の犬・フェンネルだけが癒しでした。もともとシオニーとセイン師の優しさがあふれまくった場面で誕生した愛と希望の塊みたいな生きものだし、紙とは思えないほどの、そして、紙だからこその愛嬌があって正直パーフェクト主人公・シオニーをさしおいて一番好き。巷では最新型アイボが話題だけど私は紙製のフェンネルが欲しい。フェンネルの花言葉を調べてみたら「愛情に値する」というのがあったのでフェンネルはやはり真のヒロイン。
大変美味しくいただきました
「香りにおとらずうまい。多彩な人物だというしるしだ。褒めるべきだろうな」
「わたしをですか、パスタをですか?」
相手の瞳の中で光が躍った。答えはなかった。
(P74/L11~14より引用)
こういうかけあいから察するに相性抜群の2人なので、師弟関係に留まってしまうのは
「お気に召しました?」
はちゃめちゃにお気に召しました。ありがとうございます。次回作もよろしく。
先日、書店で続編『硝子の魔術師』が平積みされているのを見かけたのでとりあえず今週末に絶対確保。3部作のラスト『真実の魔術師』も3月刊行予定とのことなので『硝子の魔術師』を2月末頃に読むとして、それまでのどこかのタイミングでもう一度本作を再読、1・2・3月と3部作を楽しもうかな。
2018年6月6日に加筆修正しました。