桜川ヒロ『完璧主義男に迫られています』を読みました。
わぁあぁあぁ!!
イベント会社で働く卯月陽菜は、社内で“営業部の鉄仮面”と有名な堅物の完璧主義男・長谷川薫に告白された。ところが彼は、陽菜を好きだと言うくせに不服そう。どうも彼の“完璧な将来計画”で付き合う予定の女性像と、陽菜はかけ離れているらしい。「大丈夫です。俺と付き合えば、徐々に素敵な女性にしてあげます」「いや、無理だわ」キッパリ断る陽菜だったが、諦めない長谷川の誠実かつ隙のないアプローチで迫られてしまい――。完璧主義男に翻弄される、頑張りOLの(恋の)運命は!?
――文庫裏より |
あらすじからすでにおもしろすぎない?
文字数や情報量の都合で文庫裏のあらすじを採用しましたがKADOKAWAのサイトに掲載されているあらすじも簡潔ながらおもしろかったのでぜひ読んでみてください。
※参照:https://www.kadokawa.co.jp/product/321801000249/
真顔でグイグイ距離を詰めてくる前半のキャラ濃度高すぎる長谷川さ
と、笑っていられたのも束の間、
「わぁあぁあぁ!!」
何かに耐え切れなくなったのか、陽菜がそう叫びながら顔を両手で覆った。
(P239/L12~13より引用)
オッケー、陽菜、そこを代われ。私が叫ぶ!顔を両手で覆う!
恋愛小説なんて読み慣れていないものだから、ところどころ文庫本をぶん投げて虚空をながめて一度冷静になってからふたたびページを開いて「あらー」
なんだ、結構おもしろいんじゃん、恋愛小説。
恋が溶けたあたりまえの底
「君は恋愛感情というものが何年続くか知っていますか?」
(P112/L3より引用)
基本的には肩の力を抜いて読めるおはなしだけど、個人的に印象に残ったのは、P112~113あたりでしょうか。
君は怖くないんですか? 結婚している相手のことをなんとも思わなくなる日が来るんですよ?
(P112/L9~11より抜粋)
これはあんまり関係ない話かな…昔、坂木司『青空の卵』(だったと思う)を読んだとき、
恋愛感情がなくても家族とかって一緒にいたいって思うじゃないですか? 恋愛感情がなくてもそういう風に思えるのって、逆にすごくないですか? ほら、恋愛より、一歩先に進んでいる感じがして!
(P113/L8~11より抜粋)
だけどそのあたりまえに対する、不安、嫌悪、恐怖、そういうのと全部むきあってみたら、陽菜の言葉もすごくしっくりきたのです。「好き」とか「嫌い」とかじゃなくて、
恋愛、なんて昔の人は巧い言葉をつくったものだなと思います。
本命は高井
ラブコメの王道を押さえつつ、恋に理想なんて無意味だよな~と明るく笑わせてくれる、軽やかな作品でした。中村航氏が自分の中でヒットして中村作品を片っぱしから読んでいた時期があり「若気のいたり」なんて思っていたのですが、なんだ、今でも結構読めるんじゃん。これからはもうちょっと積極的に手にとってもいいかな。
本書をきっかけに今後は読書の視野がまた広がりそうです。ありがとう長谷川さん。長谷川さんには本当に頭が下がりっぱなしです。だけど正直一番好きなのは『社内ちちくりあい事件』とかいう最高のネーミングセンスしてる高井。すまんな。