望月麻衣『京洛の森のアリスⅡ 自分探しの羅針盤』を読みました。表紙のかわいさ、全年齢対象のやわらかな言葉選びながらグイグイ引きこまれる読みやすさ抜群の文章、作品のよいところを説明するには本当は記事で伝えるよりも本シリーズの趣旨に沿って実際に読んでもらって個々の感性に委ねるのが一番なのだろうなというところは相変わらず。宣言どおりつづけて記事にしました。有言実行。
どんなときも、あなたと一緒にいたい。
ありすが暮らし始めた、京都によく似た不思議な町「京洛の森」。ある日想い人の蓮が老人になり戸惑うありすは、町に迷い込み同じく突然老いた女性たちと出会う。この町で存在するためには、大事なルールがあるが、彼らはそれに反してしまったようなのだ。かつて同じように老人化したありすは彼らを救うことができるのか?
――文庫裏より |
「つまり、寝室では『大人でいたい』って心から思ってるってことなんだな。まっ、全然問題ないな、ありす」
(P21/L9~10より引用)
と、しょっぱなから見せつけてくれる「最高」と書いて「いいぞもっとやれ」ことありすと蓮ですが、そうは総合卸問屋が卸さないのがこの物語の常。前作の余韻もつかのま、突如老人化してしまった蓮は〈自分が本当にやりたいこと〉を探してひとり家を出ることを決めます。
どんなときも一緒にいたい。それは誰しも恋をしたとき、あるいはかけがえのない友情や縁に恵まれたとき、一度は経験する想いだけれど、「一緒にいる」の本当の意味は、物理的なものではないということ。本書を読むと、ありすと蓮、2人とナツメ、ありすと紅葉、ありすが出会った春香と夏美――作中に登場するいろいろな関係性から、それをしみじみ痛感しました。
ナツメといえば、かわいいありすと蓮に目がいきがちでメインキャラでありながら存在感がひかえめのイケメン紳士(ウサギ)な彼が最高に格好いいラストシーンは胸熱でした。やっぱりありすには蓮だけじゃなくてナツメも必要だわ。
教えること,押しつけること
前作『京洛の森のアリス』は「自分に嘘をつかない」「誰かに必要とされる」ことが絶対
「一人一人、持っている速度が違いますから、誰かと比べるのは、そもそもが愚かなことなんですよ」
(P136/L8~9より引用)
本書におけるありすの成長を見届けたとき、紆余曲折を経てようやく再会できたありすと蓮が2作目にして早々に離ればなれになって
『自分が感じたことを丁寧に教えること』と『自分の意識を押し付けてしまうこと』は、紙一重や。もし、自分の意識を相手に押し付けてしもたら、同時に大きな『責任』も伴う。
(P173/L13~15より引用)
そして、自分の考えすべてをいちいち人に伝えることは必ずしも本人のためにならない、と語る紅葉さんの言葉は小説の感想や読書ブログに通じることもあって。ありす同様、まさしく「横面を打たれたような衝撃」を覚えました。もちろん、彼女がいうような「責任」も覚悟したうえで助言ができる人は立派だ。だけど、同じくらい、きっかけをつくるだけであとは見守るというナツメや紅葉さんのような“覚悟”を背負うこともときには必要だということ、忘れてはいけない。
社会人必見!?
というわけで、2作目はファンタジックな世界と噛みくだいたやわらかな文章で自分の「天職」というものを今一度考える、引きつづき大人が読んでも楽しめる魅惑のファンタジー小説でした。
もっと引用したい珠玉の名言がたくさんあるんですけど、引用はほら、あんまりやりすぎちゃいけないルールとかあるし。金銭の発生するビジネスだけでなく、単純に自分