※例によってばっちりネタバレになる部分を引用しているので任意で読んでください。
「エミリア! 時間もないからさっさと栄養補給だ! あと滅法熱い紅茶も淹れてくれ! さぁ、リベンジマッチの始まりだ!」
(P364/L11~12より引用)
というわけで、間髪入れずに2作目『錬金術師の消失』です。最初は惜しい気持ちでちまちま読んでいたのですが、そのうち我慢できなくなって結局300ページぐらい徹夜で一気読みしてしまった。もともと自分は紅茶党ですが、やっぱりこのシリーズを読むときは熱々の紅茶が飲みたくなりますね。ストレートで。ていうか、今私の手元には前作『錬金術師の密室』の再読感想がありますがテンションどうした。消失したのか、あのエミリアみたいな真面目な私の人格は。
今回は他国の錬金術師や軍人に加え教会の司教や巡礼者、聖騎士団などの面々も登場しますが、相変わらず閃の軌跡をⅣまでプレイしてきた私に隙はありません。なるほどロジーヌさんとかトマス教官的な面子が増えたってことだな!カタカナばっかりで主な登場人物14人とか全然大丈夫。余裕で覚えられるよ、閃の軌跡なんて最終的にプレイアブルキャラ3~40人ぐらいいたし。
ところで、2作目って普通(これが「普通」であっては本来良くないのですが)期待しないじゃないですか。どっこい、『錬金術師の消失』は全然ちゃんとおもしろかったよね。最後、むしろはじまっちゃったもんね。また。
気になるところがあるとすれば、個人的にはキャラクターメイクの点でしょうか。私は前巻のガサツで不遜なテレサが好きだったので今回はなんか丸くなったというか女性らしくなったというか結構印象が変わってしまったなぁというのが残念でとか言ってたらあああああ!なんか唐突に萌えるやつ来たぁ!具体的にはP277~とかP432~とかぁ!!納得でした。それにしたってエミリアの過剰すぎてわざとそういうふうに思うことにしてるように見える朴念仁っぷりとか、シャルロッテって元スパイならもうちょっとスマートにエミリアのことたぶらかすことできなかったの?とか目に余る点はありますが。
肝心のミステリーとしては、シンプルに嵐の中で孤立した水銀塔で起きる連続殺人事件です。孤島ならぬ「孤塔」ミステリー。読みながらもしかしてって浮かんだものはいくつかあって、それはおおむね指摘されてしまったのでやっぱりねと落胆もしたのですが、やっぱり例の「はじまった」件も含めて最後は3回ぐらい気持ちよく仰天させてもらいました。作中帝国側の錬金術師ニコラは動機に注目して事件を推理しているみたいに語られるんですが、私もこういうのって動機にすごく興味があるので、そういう観点からすると今作はもちろん褒め言葉として、狂ってて、歪んでて、最悪でした!
今回、印象に残ったのはニコラのこの言葉。
「はい。犯人は相当な自信家で、しかもその目的ももう間もなく果たせてしまう。あまりにも思いどおりに事が進んでしまうので……犯人は少しだけこの状況を利用することにしたのです。だからあえて、錬金術師であり危険度の高いパラケルスス大佐だけを幽閉し、エミリアくんを自由にしたのです。彼に秘密の地下室のことを話してもらうことで、自身を追い詰めた。そんな困難な状況の中でも見事目的を果たすことに――犯人は意味を見出したのです」
(P285/L12~P286/L1より引用)
もともと錬金術師はこの世界において天才であるがゆえにあまりに孤独で、これがその孤独な天才である錬金術師・ニコラによる推理であることからも、本シリーズはあらゆる意味での“天才の本質”を描くのが巧いともいえるのかもしれません。