さみしい
  • 物語以上のことを求められる人に、私は彼女を託したい -『人ノ町』感想

    詠坂雄二『人ノ町』を読みました。詠坂雄二という作家が私にはさっぱりわからない。どうした。めちゃくちゃおもしろかったんですけど。2年前に読んだ『インサート・コイン(ズ)』はさぁ、もっとさぁ、よくわからなかったじゃん!あらすじ読んで興味を持ったけど作者名見たとき「あー……」と言ってしまった自分を殴りに行きたい。YAH YHA YHA歌いながら。 いわゆる雰囲気ゲーのよ...
  • 奇妙が侵入してくる -『私たち異者は』感想

    スティーヴン・ミルハウザー『私たち異者は』(柴田元幸・訳)を読みました。最近とんと観ていないけど、タモリはさ、今でも「次に奇妙な扉を開けるのはあなたかもしれません」みたいなこと言ってるわけでしょ? でもさ、この小説は違うんだよ、自分のほうから扉開けて入ってくるの。巧妙に、ちょっとずつ、ちょっとずつ。あとはただ穏やかに絶望。こわい。 ミリ単位まで見逃さないリアルタイ...
  • 嫌いだ、泣きたいほどに -『あなたの右手は蜂蜜の香り』感想

    片岡翔『あなたの右手は蜂蜜の香り』を読みました。私は普段「好きだ!」と思った小説しか挙げないし、感想にマイナスな表現は極力使わないようにしているのですが、……悩んだけど、本書にとってこの言葉を使うことは必要なことだと思うから。だから言います。私はこの小説、嫌い。 小説としては粗削り あたしのせいで動物園に入れられたクマの「あなた」を、必ず救い出す。ど...
  • 明日、どこかの食卓で -『明日の食卓』感想

    椰月美智子『明日の食卓』を読みました。「石橋ユウ」を育てる3人の母親。そして「イシバシユウ」虐待死のニュース。ミステリー小説っぽいあらすじに惹かれて購入したのですが実際は“どこにでもある”家族小説または親子の物語です。……まぁ、だからゾッとするんですけどね。 ユウを殺したのは、私ですか? 静岡在住、専業主婦の石橋あすみ。神奈川在住、フリーライターの石...
  • 不完全な葦でありたい -『夢みる葦笛』感想

    上田早夕里『夢みる葦笛』を読みました。文庫裏のあらすじに「「人間とは何か」を問う」とあって良書の予感はしたものの、目次を見たとき「これは挫折するかもしれない」と不安もよぎり。積ん読が尽きた頃にようやくおそるおそる読みはじめたのですが、あのね、最高におもしろかった。それでは本書を読んで考えたこと約1万文字、どうぞ。 人間と世界の本質を問う短編集 ある日...
  • 記憶よ、風となり牙となれ -『風牙』感想

    門田充宏『風牙』を読みました。書店で小説を物色してまわっているとき、たまたまある1冊の小説を手にとって、その中にはさまっていた新刊案内の広告から興味をもって書店何件かまわってようやく探しだして購入した、という、ちょっと変わった出会いかたをした小説です。深夜のファミレスであまりの衝撃に呼吸することを忘れ、言葉を失い、しこたま号泣することになるとは、このとき、私はまだ知る由もなかった――。 ...
  • 1年あずけると3万6500円 -『あずかりやさん 桐島くんの青春』

    大山淳子『あずかりやさん 桐島くんの青春』を読みました。読書感想文特集2018年版でも紹介し、まだ記憶に新しい3月読了本『あずかりさん』の続編です。続編があることは知っていて、文庫化するのをうずうず待っていたのですがこのあいだ書店で念願の文庫を見つけたので即購入。積ん読の山でしばらく寝かせることになってしまいましたがとうとう読むことができました。 クオリティーは変...
  • 夏の夜 カラスの星 -『カラスのジョンソン』感想

    ドリアン助川『カラスのジョンソン』を読みました。最初タイトルを見て「カラスを題材にするの珍しいな」と手にとったあと作者名を二度見してしまった。ドリアン助川。表紙の世界観とあまりにもマッチしていなすぎてすごく気になる。初読の作者でしたが名前の印象を気持ちよくぶっこわしてくれる、私たち“生きもの”を克明に描いた詩的で美しいおはなしでした。 神の視点 小学...
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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。