【感想】
  • 感想│森川智喜『死者と言葉を交わすなかれ』

    当ブログでは三途川理シリーズでおなじみ森川智喜さんが2020年に上梓された、三途川理シリーズじゃない長編ミステリー。 純粋に三途川理シリーズが好きな私なので正直最初はあまり期待していなかったのですが、結局、後頭部をどちゃくそに殴られた気分です。普通におもしろかった。あたりまえだけど。いや、「普通」ですらなかったな。ミステリー小説であることをフルに活かした1冊だったと思う。森川さんはあ...
  • 現代に適合した究極の妖怪〈怖ガラセ屋サン〉に震えろ -『怖ガラセ屋サン』感想

    澤村伊智『怖ガラセ屋サン』を読みました。リアリズム、詐欺、イジメ、怪談ビジネス、芸能界、大病……さまざまな境遇におかれすっかり恐怖を軽んじるようになってしまった人々にとっておきの恐怖を突きつける〈怖ガラセ屋サン〉にまつわる連作短編集。ホラー小説を読んで窒息しかけた過去があるのに澤村産ホラーだけなぜか着々と新刊を追っている私も、まぁ、ホラーっちゃホラー。 大人になって「...

    2021年12月28日

  • 良い女と書いて「娘」という、呪縛 -『あさひは失敗しない』感想

    ネタバレ注意! 本記事は真下みこと『あさひは失敗しない』の重要な部分または結末について触れていますので、作品を既読である、またはネタバレを承諾する場合のみ閲覧することを推奨します。 真下みこと『あさひは失敗しない』を読みました。母が娘に授けた言葉は、愛か、呪いか。女性だけでなく、母親という存在に閉塞感を覚えるすべての「子供」に読んでほしい普遍の自立の物語です...
  • 貧困はきっと、思考の停止からはじまる -『らんちう』感想

    ネタバレ注意! 本記事は赤松利市『らんちう』の重要な部分または結末について触れていますので、作品を既読である、またはネタバレを承諾する場合のみ閲覧することを推奨します。 赤松利市『らんちう』を読んだあとのアウトプットです。「殺されて当然」とすら思ってしまう支配人の強烈な手腕と性格、従業員たちの口からサブリミナル的に聞かされる自己啓発セミナーの異様な光景、その...
  • 人は得てして、なりたいものになれない -『偽恋愛小説家、最後の嘘』感想

    森晶麿『偽恋愛小説家、最後の嘘』を読みました。前作からどのぐらいぶり?うそ、5年……?控えている積ん読のリストがえぐいので今回はとくに前作・前々作の再読とかはしなかったんですけど、それでもすんなり文章や世界観に入っていけました。正味1日で読んじゃったな。さすが森晶麿。いや、森センセ。 今回は作家・星寛人がSNSの公式アカウントにて「最高傑作ができてしまった」とつぶやいたことから各出版...
  • クリスマスは「誰と」過ごすかじゃなく「なにをして」過ごすかを大事にする日 -『通い猫アルフィーの贈り物』感想

    レイチェル・ウェルズ『通い猫アルフィーの贈り物』(中西和美・訳)を読みました。シリーズ7作目。新刊の存在自体は11月の段階で知っていたんですけど、クリスマスの話ということで、12月になってから読もうとこのタイミングになりました。 5、6作目の感想が抜けているのはおもしろくなかったからではなく感想を書くためのテーマが自分の中に見つけられなかったからなんですけど、今回は久しぶりにアルフィ...
  • 優しくするのが恋。赦すのが、愛。-『水たまりで息をする』感想

    高瀬隼子『水たまりで息をする』を読みました。読了から一晩経ちましたが、なんか、すごいものに出会ってしまったなぁという気持ちです。久しぶりに。初めて今村夏子の『あひる』を読んだときみたいな。とても現代的で、かつ寓話的でもあり、まさしく水たまりのような意図的につくられた芸術的な閉塞感。 そういえば、雰囲気は『星の子』に似ているかもしれない。あちらは狂気の中にも親子の愛情があったからまだ救...
  • 奇跡とはくりかえされる日常、 現状維持の心理をいう -『7.5グラムの奇跡』感想

    前口径約24ミリ、重量約7.5グラム、容積約6.5ミリリットルの中に宿る光は、この世界の他のどんな場所に現れる光より眩しく思えた。 (P299/L1~2より引用) 2ヶ月ほど前、小説を書いて久しぶりに壁にぶちあたりました。 主人公の〈僕〉はじつはあまり耳が聴こえないことを周囲に隠しているのだけど、私には、耳が聴こえないという経験がない。周囲に耳が聴こえない人も...
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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。