• 今日もまた怒るのを忘れた

    突然小テストをはじめてしまってごめんなさい。一般常識を知りたかったんです。解答欄、埋めてくれました?やっぱり『どこにいる?』とか『こっちもついたよ!』が正解ですか?ですよね?それでは答えを確認してみましょう、こちらです。 『ついた!』 『俺は?』 訊くな。 恋人とはもう5年以上のつきあいになるけれど、とにかく彼は待ちあわせの時間を守ら...

    2019年5月16日

  • 明日、どこかの食卓で -『明日の食卓』感想

    椰月美智子『明日の食卓』を読みました。「石橋ユウ」を育てる3人の母親。そして「イシバシユウ」虐待死のニュース。ミステリー小説っぽいあらすじに惹かれて購入したのですが実際は“どこにでもある”家族小説または親子の物語です。……まぁ、だからゾッとするんですけどね。 ユウを殺したのは、私ですか? 静岡在住、専業主婦の石橋あすみ。神奈川在住、フリーライターの石...
  • 「じぶんちが一番」って、ほんと? -『ひとんち 澤村伊智短編集』を考察する

    !ネタバレ注意! 本記事は澤村伊智『ひとんち 澤村伊智短編集』に関する考察記事です。作品の内容や結末について本文を引用しながら書いているので、作品を既読である、またはネタバレを承諾する場合のみ閲覧することを推奨します。また、記載される内容はあくまで筆者個人の意見です。以上のことに同意していただける方のみ続きをお読みください。 澤村伊智『ひとんち 澤村伊智短編集』...

    2019年4月15日

  • 宿命をくりかえす彼らのために -『砂糖の空から落ちてきた少女』感想

    ショーニン・マグワイア『砂糖の空から落ちてきた少女』(原島文世・訳)を読みました。ジャックとジルによる前日譚『トランクの中に行った双子』をはさんでふたたびナンシーやケイドたちと再会しましたが、……うーん、個人的には『トランクの中に行った双子』≫『不思議の国の少女たち』>本書かなぁ。菓子の国とか正真正銘ファンタジー大冒険だったはずが思っていたよりあっさりした読み心地だった。というわけで、感想...
  • 誰でも書けるあらすじよりも、誰にも書けない感想が書きたい。- Mugitterの基本方針

    最近、北野唯我『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』を読んで、めちゃくちゃ意訳すると「人間には大きく天才・秀才・凡人の3タイプがいて彼らの物事の判断基準は根本的に違う(凡人は共感性とその圧倒的な数で天才を殺すことができる)、同じ土俵に立とうとせず、自分のタイプと武器を理解したうえで相手の主語にあわせたアプローチで組織や世界をまわそう!」みたいな話なのですが、それはさておき読...

    2019年3月23日

  • 本に恩返しは、できる。 -『神さまのいる書店 まほろばの夏』感想

    三萩せんや『神さまのいる書店 まほろばの夏』を読みました。以前書店の平積みで最新刊を見かけたことがあって気にはなっていた作品、あるとき偶然にもその第1作目を文庫で見つけたのでとうとう購入。ライトノベルとかキャラクター小説の類なのかなぁと軽い気持ちで読みはじめたはずが本を閉じたときにはすっかり目頭が熱くなっていました。 本に恩返しは、できる。 本好きの...
  • きみの右手はキャラメルポップコーン

    私の鼻は父譲りの団子鼻で、上から先端をつままれる程度なら普通に息ができるし、異常にやわらかい。 人の鼻をわざわざ触ろうとする人はまずいないので生まれてこのかたまったく披露される機会がなかったのだが、最近になって、ようやく友人のひとりがこれに気がついた。以来、友人はしょっちゅう私の鼻を触る。断りもなく。 先日、いつものように友人が団子鼻とたわむれはじめ、私はされるがままに...

    2019年3月6日

  • 少女を大人にするもの -『薫香のカナピウム』感想

    上田早夕里『薫香のカナピウム』を読みました。前回『夢みる葦笛』の感想の最後で宣言したとおり、買ったきり本棚でねむっていた同作者の長編を救出です。ここは短編と長編の違いでもありますが、同じSFの括りでも本書は物語に起伏はさほど多くなく、主人公・愛琉の成長を軸に、どっしり腰を据えて読むような作品でした。 静かで、とても騒々しい 生態系が一変した未来の地球...
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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。