• 絶望の森を抜けて -『城の王』感想

    スーザン・ヒル『城の王』(幸田敦子・訳)を読みました。読後に思ったこと、考えたこと、感じたこと――そのすべてを言葉にして綴るのは難しく、読み返してみると抽象的で短い文章になってしまったのですが、それでも本書と本書を読んだ私の感想はなにより自分のためにここに残しておきたいと強く思ったので、短くても抽象的でも、ありのままを載せることにしました。読了直後にしたためた感想メモほとんどそのままですが...
  • 私はこれからも考えすぎな文章を書いて生きていく -『会社を綴る人』感想

    朱野帰子『会社を綴る人』を読みました。初読の作家でしたが、作者名どこかで見たことがあるような、と思ったら作者略歴に『マタタビ潔子の猫魂』の文字を見つけて納得。そっか、私がちょうど「ダ・ヴィンチ」(雑誌)を読んでいた時期に連載していた作品だ。あいにく『マタタビ潔子の猫魂』は読んでいないのですが、本書は号泣するほどよかったし、紙屋さん大好き、これから何度も読み返して一生の宝物にしようと思いまし...
  • 言葉にできない小説3選

    筆舌に尽くしがたい、という言葉があるように、小説にはときに好きすぎてもはや「好き」としか言えない作品もある。というわけで、今回は2018年に読んだ小説の中から確実に好きなんだけど具体的にどこが好きなのか言葉にできなかった無念の良著たちを3冊、せめてこれだけは言いたいというGoodなポイントを添えて紹介します。小田和正氏の「言葉にできない」を脳内再生しながらよろしくおねがいします。はじめます...

    2018年12月11日

  • この謎を哲学せよ -『塩見﨑理人の謎解き定理 丸い三角について考える仕事をしています』感想

    甲斐田紫乃『塩見﨑理人の謎解き定理 丸い三角について考える仕事をしています』を読みました。新刊コーナーの棚で見かけて、あらすじの中に「哲学」という単語があった、という理由だけで軽率に買った1冊だったんだけど文体もストーリー展開も思っていたよりずっとやわらかくほのぼのとしたミステリーだった。楽しく読めました。 親しみやすい哲学系小説 「――丸い三角、赤...
  • あまくて、つめたくて、やさしい -『金曜日の本屋さん 冬のバニラアイス』感想

    金曜堂シリーズのサブタイトル「夏とサイダー」「秋とポタージュ」ときたので次は冬と〇〇だと思うんだけどココア≫ホットチョコレート>ホットミルク>ミネストローネ≫レモネードの順でありそう。 — 麦 (@BLT691) 2017年9月6日 バニラアイスだった。 というわけで、名取佐和子『金曜日の本屋さん 冬のバニラアイス』を読みました。おい、ドヤ顔で予想していた...
  • 記憶よ、風となり牙となれ -『風牙』感想

    門田充宏『風牙』を読みました。書店で小説を物色してまわっているとき、たまたまある1冊の小説を手にとって、その中にはさまっていた新刊案内の広告から興味をもって書店何件かまわってようやく探しだして購入した、という、ちょっと変わった出会いかたをした小説です。深夜のファミレスであまりの衝撃に呼吸することを忘れ、言葉を失い、しこたま号泣することになるとは、このとき、私はまだ知る由もなかった――。 ...
  • あなたの人生も変えるかもしれない本5選

    最近「シミルボン」というサイトに登録しまして、これ、プロフィールの中に「麦を構成する10冊」という欄があるんですよ。それで、これまでの読書人生をふりかえりながら今ぽつぽつ本を登録しているんですが、そういえばこういう話題ってまだ記事にしたことなかったなと。初歩の初歩っぽい話題なのに。というわけで書きました。自分のつまらない価値観をガラリと変えてくれたマジの良著なので本当は人に教えたく...

    2018年11月22日

  • 人は誰しもハッピーマンだ -『こちら市役所市民課ヒーロー係です。』感想

    銀南『こちら市役所市民課ヒーロー係です。』を読みました。先日、神保町の書店を何件かまわったのですがそのときに平積みで見つけて「気軽にサクサク読めそう」という理由で手にとりました。実際正味1日でサクサク読めたうえにほっこりもできたので存外によかったです。 萌える公務員ヒーロー! 東京都美守市。この町の市役所には変わった窓口がある。イベントでヒーローアク...

    2018年11月21日

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Writer
佐々木 麦 Sasaki Mugi
小説を書いたり、読んだ小説についてあれこれ考察をするのが趣味です。雑食のつもりですが、ユニークな設定やしっかりとテーマがある小説に惹かれがち。小説の他に哲学、心理学、美術、異形や神話などの学術本も読みます。